
動悸と息切れを感じたら、まず受診の急ぎ方を考えましょう
「この動悸は心臓でしょうか、それとも以前言われた貧血でしょうか」。外来でよく伺う質問です。ただ、症状だけで原因を見分けることは、医師にとっても簡単ではありません1。救急を考える兆候がないかを先に確かめ、なければ外来で相談するという順番で考えると、次の行動を決めやすくなります。救急受診の目安と、受診前の準備を順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 胸の圧迫感や失神、強い息苦しさ、止まらない動悸がある場合は、救急受診や119番への連絡を検討します。
- 動悸・息切れは、不整脈や心不全のほか、貧血、呼吸器・甲状腺の異常、脱水なども関係することがあります。
- 症状の時刻や長さ、状況、脈の様子を記録し、内科などで相談しましょう。検査は診察に基づいて検討されます。
目次
動悸・息切れで救急受診を考える兆候
次のような症状があるときは、外来の予約を待たずに救急受診を考えてください。
- 胸の圧迫感や締めつけ感が数分以上続く
- 気を失った、または気が遠くなった
- 座っていても息が苦しく、横になるとさらに苦しい
- 急に始まった動悸が止まらず、冷や汗や吐き気を伴う
- 短い時間のうちに症状が強まっている
急な呼吸困難の背景には、心不全や心筋梗塞などが隠れていることがあります。救急の現場でも、診察・心電図・血液検査などを組み合わせて慎重に判断しています4。心筋梗塞などは発症からの時間が対応に大きく関わる病気とされており、迷ったときは早めの受診が勧められています1。
作業中に症状が出たら、手を止めて座り、周りの人に声をかけましょう。車の運転中であれば、ハザードランプを点けて安全な場所に停車してください。症状が強いときは自分で運転して病院へ向かわず、119番への連絡を考えてください。 判断に迷う場合は、お住まいの地域の救急相談窓口を利用する方法もあります。
症状が続く・繰り返すときに考えられる原因
救急を考えるほどではなくても、続く息切れや、繰り返す動悸は外来で相談したい症状です。原因は、心臓に関わるものとそれ以外のものに分けて考えます。
心臓に関わる原因
不整脈があると、脈が速くなる・飛ぶ・乱れるといった感覚が動悸として現れます。心不全では、心臓のポンプとしての働きが本来の機能を果たせなくなります。その結果、階段や坂道での息切れ、疲れやすさ、足のむくみなどがみられることがあります13。
心臓以外の原因
- 貧血:血液が運ぶ酸素が少なくなり、心臓が拍動を増やして補おうとする
- 呼吸器の病気:喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などで息切れが起こる
- 甲状腺の異常:甲状腺ホルモンが多くなると、脈が速くなりやすい
このほか、更年期の自律神経の変化、脱水、睡眠不足、カフェインや一部の薬が関係することもあります。
階段での息切れと安静時の動悸が重なるとき、原因が一つとは限りません。 以前に貧血を指摘された方でも、心臓の検査が必要かどうかは診察で確認します。年齢や疲れのせいと自分で決めてしまわず、一度相談の機会をつくりましょう。
診察で伝えたい、動悸と息切れの記録
動悸は、受診したときにはおさまっていることがよくあります。そのため、症状が出たときの様子をどこまで伝えられるかによって、選ぶ検査が変わることもあります1。スマートフォンのメモなどに、次の項目を残しておきましょう。
- いつから始まったか(例:2週間前から)
- 1回あたりの長さ(数秒・数分・数時間)と頻度
- 起こった場面(階段、作業中、運転中、安静時、就寝前など)
- 脈の感じ方(速い、飛ぶ、不規則、ドクンと強く打つ)
- 胸の痛みや圧迫感、めまい、むくみの有無
症状が出たら手首で脈をとり、1分間の脈拍数と、リズムが規則的かどうかを書き留めてください。これが診断の手がかりになります。脈拍が表示される家庭用血圧計があれば、その数値でも構いません。
あわせて、以前に指摘された貧血や甲状腺の異常、飲んでいる薬やサプリメント、ご家族の心臓病の病歴も伝えましょう。お薬手帳と健康診断の結果を持っていくと、確認がすみやかに進みます。
相談先と、診察で行う検査
原因の見当がつかない段階であれば、内科が相談先になります。心臓の病気が気になるときや、ご家族に心臓病の方がいる場合は、循環器内科も選択肢です。まずは大きな病院より総合的に診察可能な近くのクリニックへの受診をお勧めします。診察後必要時には総合病院へ紹介して頂き専門的な検査・治療を受けることも可能です。また検査を当日にまとめて受けられるか、結果の説明に再来院が必要かを予約時に確かめておくと、予定を組みやすくなります。
動悸・息切れの診察では、主に次の検査が行われます。
- 12誘導心電図:受診時点の心拍のリズムや、心臓への負担の兆しを調べる
- ホルター心電図:小型の機器を約24時間身につけ、日常生活の中で起こる不整脈を記録する
- 血液検査:貧血の有無、甲状腺ホルモン、心臓への負担を反映するBNPやNT-proBNPなどを確認する4
- 心臓の超音波検査:心臓の動きや弁の状態を画像で確認する
- 胸部X線・胸部CT・呼吸機能検査:肺や気管支の状態を確認する
さなげクリニックでは上記検査は全て対応可能です。
当院を含め、医療機関によって受けられる検査や設備は異なります。どの検査を行うかは、問診と診察で症状を伺ったうえで判断されます。 検査費用は、検査内容や保険の自己負担割合によって変わります。具体的な費用は受診先で確認できます。
安静時の動悸が一度でもあった方は、ここ数日の症状をメモにまとめ、受診時に伝えてください。
よくある質問
Q1. 座って休んでいるときに動悸がありました。すぐ受診したほうがよいですか?
A. 胸の圧迫感、失神、強い息苦しさを伴う場合や、動悸が止まらない場合は救急受診を考えてください。数分以内におさまり、ほかの症状がない場合でも、安静時の動悸を繰り返すときは外来で相談しましょう。起きた時刻や続いた長さを記録しておくと、診察で役立ちます。
Q2. 車の運転中に症状が強くなったら、どうすればよいですか?
A. ハザードランプを点け、安全な場所に車を止めてください。休んでもおさまらない、または強まる場合は、自分で運転して病院へ向かわず、119番への連絡を考えましょう。症状が落ち着いたあとも、同じことが起きた場合は受診時に医師へ伝えてください。
Q3. 受診したときには症状がなく、心電図で異常が見つからないこともありますか?
A. あります。動悸は発作的に起こることが多いため、受診時の心電図に表れないことがあります。その場合は、ホルター心電図で日常生活中の心拍を記録するなど、症状の出方に合わせて検査を検討します。
Q4. 以前に貧血と言われています。今回の息切れも貧血が原因でしょうか?
A. 貧血で息切れや動悸が起こることはありますが、心臓や甲状腺など、ほかの原因が重なっている可能性もあります。血液検査で現在の状態を確認し、必要に応じて心電図などの検査も組み合わせて判断します。
参考文献
- 1 日本循環器学会.心疾患・血管疾患に関する学術・啓発情報.https://www.j-circ.or.jp/
- 3 Azambuja ACM, de Oliveira LZ, Sbruzzi G. Inspiratory Muscle Training in Patients With Heart Failure: What Is New? Systematic Review and Meta-Analysis. Physical therapy. 2020. PMID: 32936904 / DOI: 10.1093/ptj/pzaa171
- 4 Martindale JL, Wakai A, Collins SP, et al. Diagnosing Acute Heart Failure in the Emergency Department: A Systematic Review and Meta-analysis. Academic emergency medicine. 2016. PMID: 26910112 / DOI: 10.1111/acem.12878
名古屋大学医学部附属病院循環器内科
小牧市民病院にて初期研修
大同病院循環器内科
小牧市民病院循環器科
トヨタ記念病院循環器内科
中東遠総合医療センター循環器内科
さなげクリニック 院長
医学博士
日本内科学会認定内科医/総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本救急医学会救急科専門医
日本心血管インターベンション学会認定医
日本心エコー図学会心エコー図専門医
SHD心エコー図認証医
日本超音波医学会超音波専門医
産業医
心臓リハビリテーション指導士
緩和ケア研修会修了
心不全緩和ケアトレーニングコース修了
植込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修証
所属学会
日本内科学会
日本循環器学会
日本救急医学会
日本心血管インターベンション学会
日本心臓リハビリテーション学会
日本心エコー図学会
日本超音波医学会
日本不整脈学会
日本集中治療医学会
